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遥かなる宮崎

 10年近く前、私はひょんな事から友達と宮崎に遊びに行く事になりました。当時私は東京に住んでいてましたが、友達は別の場所に住んでいたので、それぞれが直接宮崎に行って現地で落ち合う事にしました。

 私は宮崎に行くため、あるルートから格安の航空チケットを手に入れました。とても安いのですが予約が出来ないこのチケット。当日飛行機が満席であれば搭乗できない事もあるのです。しかし、今までそんな事は一度もなかったので「今度も何とかなるだろ」とすっかり油断していました。

 旅行当日の朝、少し早めに羽田に行くと宮崎行き飛行機は第一便から満席。しかし私は「何本か待てば乗れるだろう」と思い、空港内をブラブラ散歩して食事をしたり、旅の余興にとマジック用トランプ(仕掛けがあって簡単にマジックが出来るのです。)を買ったりと余裕たっぷりに構えてました。しかしお昼過ぎても宮崎行きの飛行機は全て満席。さすがに私も心配になってきましたが、どうする事も出来ないのでただ落着きもなく待つだけでした。

 夕方近くなり、私が乗ろうとしてた航空会社の宮崎行きは全て満席でほぼ絶望状態。仕方なく格安チケットでの搭乗は諦め、別の航空会社のチケットを購入しました。しかし当日のしかも夕方での購入! 当然こちらでも空席待ちとなりました。それでも我慢強く待っていると、意外に私の前の空席待ち客達が頻繁に呼ばれ、飛行機に搭乗していきます。宮崎行きの飛行機は私が空席待ちしている飛行機が本日ラスト。もう後はありません。「神様、一生のお願いです! 何とか飛行機に乗せてください!」と(一生を掛ける程の問題だったかどうかはともかく)私は天に助けを求めて心の中で祈りました。

 その甲斐あってか私の前にいた空席待ち客は全て搭乗出来、次は私の番となりました。チケットカウンターでは受付の女性が「宮崎行きご搭乗の○○さんいらっしゃいませんか~!」としきりに予約を入れた正規の(?)お客の名前を呼んでいます。そんなに働かなくていいから、と心の中で思いながら待っていると、その受付の女性が私の前までやってきて、「ラスト1席、予約されたお客様がお越しにならないようですので…」と説明を始めました。私は説明を聞きながら「これで飛行機に乗れる! 宮崎にいける! やった~!」と心の中で叫びました。しかし…私が荷物を持って搭乗口に向かおうとした正にその瞬間、横から初老の紳士が「あの~この飛行機でいいんでしょうか~?」とその女性に尋ねてきました。

 その紳士が何と予約客だったのです。受付の女性はその紳士を案内したあと私に向かい、「申し訳ありませんが当機はこれで満席となりました」と申し訳なさそうに説明してくれました。そしてショックに打ちひしがれてる私の目の前で、飛行機への搭乗口は無常にも閉ざされてしまいました。

 ふと空港の窓を見ると、朝来た時には爽やかな陽の光が射していたのに、今では哀愁を感じさせる夕日が差し込んでいます。飛行機に乗れなかった私は結局、一日空港内でただ待っていただけでした。

 重い足を引きずって帰宅した時、私に残っていたのは無意味な一日を過ごした虚脱感と、友達に見せようと買ったあのトランプだけでした。

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 ラッキーな事が立て続けに起こる日もあれば、ついてない事ばかりが起こる日もありま [続きを読む]

受信: 2005年10月13日 (木) 13時44分

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